ウォルト・ディズニーと「鉄道愛」

なぜディズニーパークには蒸気機関車が走っているのか?


ディズニーパークの象徴のひとつ、蒸気機関車。 アメリカ、東京、パリ、香港——世界各地のディズニーパークで今も走り続けています。

でも、なぜディズニーパークに蒸気機関車が必要だったのでしょうか?
その答えには、Walt Disney自身の”深い鉄道愛”が関係しています。


ウォルトは「本気」の鉄道マニアだった

ウォルトの鉄道好きは、単なる趣味というレベルではありませんでした。

少年時代を過ごしたのは、ミズーリ州の小さな町・マーセリン。 大きな産業があるわけでもない、典型的なアメリカ中西部の地方都市でしたが、鉄道の発展とともに形成された”鉄道の街”でもありました。 駅を中心に人や物資が行き交い、蒸気機関車が日常風景に溶け込んでいた時代です。

ウォルトは線路沿いを歩いては機関士に手を振り、夜はベッドの中で自分が機関車を運転する夢を描いていました。鉄道会社の列車内で新聞や軽食を販売するアルバイトも経験しています。

現代で言えば、熱量高めの”鉄オタ”。 こうした原体験が、ウォルトの鉄道愛の根っこにあったのでしょう。


1940年代、鉄道熱がさらに加速する

1940年代に入ると、ウォルトの鉄道熱はさらにヒートアップしていきます。

当時のアメリカには、実際に人を乗せて走るミニチュアサイズの蒸気機関車を自宅の庭で走らせる趣味がありました。”模型”というより、小型の本物の鉄道です。 そして、ディズニー・スタジオにもそんな仲間がいました。

ウォルトが製作した1/8スケール蒸気機関車『リリー・ベル号』1951年撮影

ここで登場するのが、のちに”ディズニーレジェンド”と呼ばれる3人。

  • Ward Kimball(ウォード・キンボール)
  • Ollie Johnston(オリー・ジョンストン)
  • Roger E. Broggie(ロジャー・ブロギー)

キンボールとジョンストンは、ディズニーを代表する伝説的アニメーター集団「ナイン・オールドメン」のメンバーでありながら、自前のミニチュア蒸気機関車を持つ本格的な鉄道愛好家でした。 ブロギーは機械工作のエキスパートとして、ウォルトの鉄道製作を技術面で支えていきます。

彼らとの出会いが、ウォルトの「自分も走らせたい」という情熱に火をつけました。


自宅の庭に「本物の鉄道」を作ってしまった

1950年代、ウォルトはロサンゼルスの新居の敷地内に、実際に人が乗れるミニチュア鉄道――『Carolwood Pacific Railroad』の建設を決意します。

家族からは正気を疑われましたが、ウォルトは言い放ちました。 

庭に線路を敷けないなら、新居を建てる意味はない!

弁護士には「うちはペットも含めて、自分以外みんな女性なんだ。だから自宅に線路を敷けるよう、ちゃんと契約書にしておいてほしい」とまで依頼する徹底ぶり。

さらに鉄道用のトンネルを作りたくなるも、莫大な工事費にさすがのウォルトも一度は躊躇します。
ところがある日、車を運転中にラジオから”人生を楽しめ”という歌詞の曲が流れてきて——直ぐにトンネル工事を発注してしまいました。 工事費がいくらかかったか、家族には最後まで知らされなかったといいます。


「Carolwood Pacific Railroad」はディズニーランドの原型だった

ウォルトにとって、この”本気の庭鉄道”は単なる趣味ではありませんでした。

線路を敷き、橋を架け、トンネルを掘り、車窓からの風景を作り込んでいくうちに、ウォルトの関心は少しずつ変化していきます。 
「自分が鉄道を楽しむこと」から、「人々を乗せて、別世界を旅してもらうこと」へ。

当初はディズニー・スタジオ近くに小さな”Mickey Mouse Park”を作り、そこにCarolwood Pacific Railroadのような鉄道を走らせる構想もありました。
しかし、より多くの人が楽しめる場所にするには、スタジオ脇の小さな敷地では足りない。

こうしてウォルトは広大な土地を求め、最終的にカリフォルニア・アナハイムへ。
自宅の庭を走っていた小さな蒸気機関車の夢は、やがてディズニーランドという”家族みんなで楽しめる場所”へと育っていったのです。

ディズニーランドの原型となったパークプラン(ウォルト・ディズニー夢の建設ディズニーランドUSAより)

まとめ

ウォルトがディズニーランドに込めたのは、「大人も子供も一緒に楽しめる場所を作りたい」という想いでした。

Carolwood Pacific Railroadでも、娘たちや友人を乗せて鉄道を楽しんでいたウォルト。 鉄道が好きだったのは、走らせること自体が楽しかったのはもちろん、誰かと一緒に乗ることが嬉しかったからでもあったのかもしれません。

ウォルトの鉄道愛は、ひとりの趣味にとどまらず、やがて世界中の家族が笑顔で集まる場所へと繋がっていった——そう考えると、ディズニーパークの蒸気機関車がより特別なものに見えてきませんか?

参考文献
ウォルト・ディズニー物語 D・ディズニー・ミラー
ウォルト・ディズニー夢の建設ディズニーランドUSA
THE MAIN STREET GAZETTE Vol.2 No.8 1991年8月

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